名古屋高等裁判所 昭和24年(控)1154号 判決 1949年12月27日
被告人
森友春
主文
原判決を破棄する。
本件を名古屋地方裁判所に差戻す。
理由
弁護人佐藤正治提出の控訴趣意書の論旨は別紙の通りである。
依つて記録に基き審按するに原審判決書の記載に依れば、
一、原審は被告人の賍物牙保の点を認定した証拠として「川合かな提出の盜難被害届」を挙示してあるが記録を閲するに斯る書面は原審公廷に於て提出せられた記載がない。惟うに右は第二回公判調書に記載せられた「川合かな提出の盜難届写」を指すものであろうが斯る書面を証拠として採用するに就ては須く原本の存在並びに其内容の同一性を審査した後でなければならないことは刑事訴訟法第三百二十六條第一項所定の趣旨に徴するも明かなところである。然るに前記公判調書に依るも原審は右手続を爲さず單に被告人及び弁護人の同意のみに依り漫然之を採用したことが確認せられるから結局原判決には採証法則の違反があり且つ右の違反は判決に影響を及ぼすべきものと断ぜざるを得ない。
(註) なお、本件は、他にも事実誤認等の瑕があるものとされて破棄されたものである。